研究概要 |
1.温州ミカン果実の砂じょうの発達過程の解剖学的研究 砂じょうの発達過程を光顕並びに透過型電顕により観察した. 砂じょうは開花直前に心室内壁より突起した. 砂じょうの長さが約0.7mmに達した段階で袋状の部分と柄の分化が認められるようになった. 砂じょう中への糖成分の蓄積は砂じょうが最大に達したころに急速に開始した. 砂じょう柄中には維管束や仮導管組織はみられなかったが, 砂じょう柄の柔組織細胞の薄い細胞壁には数多くの原形質連絡が認められた. その密度は, 砂じょうが拡大するにつれて高くなった. 成熟期の砂じょう柄では, 細胞壁の拡大する部位や原形質連絡をはじめミトコンドリア, 数多くの小さな液胞が観察された. 砂じょう内への物質の移行には砂じょう柄中の柔組織細胞や原形質連絡が関与したSymplasticな転流経路が存在するものと推察された. 2.組織培養によるカンキツ類果実の砂じょうの発達 30種類のカンキツ類果実を用いて, MS培地(1962年)を基本培地として, 6月26日と8月5日に砂じょうの培養を行った. pH条件(pH4.5とpH5.6)並びに温度条件(25°Cと30°C)について比較したが, 両時期の培養では著しい相異は認められなかった. 6月26日の結果から, 砂じょうの成長がとくに良好であったのは, 'テング', '杉山ウンシュウ', '小林ミカン', '宮川早生'であった. 8月5日では6月26日より砂じょうの成長は良好であった. そのうちとくに優れたのは, 'ナルト', '小林ミカン', '杉山ウンシュウ', '宮川早生', '平戸ブンタン', 'リスボン', 'ヒュウガナツ', '山ミカン'であった. 以上の結果から, 砂じょうの組織培養を実験系として用いることは, カンキツ類果実の砂じょうの発達過程を生理学的並びに解剖学的に調査する場合の有効な方法になるものと考えられる.
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