研究概要 |
昆虫疫病菌類に属するEntomophaga aulicae,Erynia blunckii,E.radicansを中心に, 効率の高い細胞融合法を確立することを目的として, 基礎的実験を行った. プロトプラスト作出のための菌体としては, 0.2%酵母エキス添加Sabouraud dextrose液体培地により25°Cで3〜4日振とう培養して得た若い短菌糸が最も効率が高かった. 細胞壁溶解酵素としては浸透圧調整剤を含む0.15MS〓rensen燐酸緩衝液に各10%になるようにセルラーゼ, マセロチーム, ドリセラーゼを混合したものが最適であった. 10〜12時間の酵素処理で十分な量のプロトプラストが得られた. 処理酵素液の最適pHは5.9であった. 浸透圧調整剤は0.6Mマンニトールが好適であった. プロトプラスト生成過程における細胞の形態学的変化を経時的に検討した. プロトプラストの遊離は処理後3時間で始まり, 1個の菌糸体の諸所がくびれ, やがてじゅず状にプロトプラストが連鎖して生成された. 10時間後には菌糸体の半分以上がプロトプラストに変った. これらはナイロンメッシュによる濾過, さらに0.6Mマンニトールを含む上記緩衝液による遠心分離法により, プロトプラストだけきれいに分離できた. 作出されたプロトプラストについて, 4′-6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)によるDNA染色により有核率を調べな結果, 各菌とも90%以上であった. さらに核の様相を透過型電子顕微鏡により詳細に検討した. プロトプラストの融合処理には浸透圧調整剤としてCacl_2を含む40%polyethylene plycolが効果的で, 処理後10分間で8の字状, 繭型を経て元の約2倍の大きさの球形となった. これらはGraceの組織培養基で再生菌糸をよく発育させた. 再生過程のプロトプラストはDAPIに好染し, またfluorescein isothiocyanateでラベルしたWheat germ agg-lutininとconcanabalinA染色に対する反応からプロトプラストの代謝活性は高く, 細胞壁再生の速さを認めた.
|