研究概要 |
植物病原菌のもつ遺伝情報を明らかにするためには、突然変異株を用いた交雑実験が欠かせない。本研究では、イネ科植物葉枯病菌について、子のう胞子分析を突然変異株を供試して行う基礎を確立した。以下に主要な成果をとりまとめる。 1.植物病原糸状菌のアナモルフ-テレオモルフ関係の解明とその利用;イネ科植物葉枯病菌を中心にアナモルフ-テレオモルフ関係を考察した。子のう胞子及び分生子の室内形成法とその要因について明らかにした。また、コショウ樹ネクトリア病の圃場伝染における子のう胞子飛散について実証した。 2.トウモロコシごま葉枯病菌の突然変異誘発条件;ニトロソグアニジン(MNNG)、メタンスルホン酸エチル、UV光及びγー線を変異源として、分生子に対する致死及び突然変異誘発効果を調べた。この結果、化学変異源がより高い突然変異誘発能をもつことが明らかとなった。MNNGでは生存率5%前後、メタンスルホン酸エチルでは、生存率1.4%の処理が最適であった。 3.突然変異株を用いたトウモロコシごま葉枯病菌遺伝子の解析;突然変異剤処理によって得られた5種類の色素合成欠損株の遺伝的閉鎖部位を調べた。これらは、メラニン生合成系の欠損株であった。同定した遺伝子は次の通りである。Alb1;ペンタケタイドのサイクリゼーション、Alb2;閉鎖部位不明、Scy;サイタロンの変換、Brn;1,3,6-THNの変換、Pgr;1,8-DHNの酸化、以上の各過程に欠損があると考えられた。子のう胞子分析を行った結果、Alb1,Alb2及びBrnは密に連鎖していた。また、Scy,Pgr間にも連鎖が認められた。しかし、両群の間には連鎖関係が認められなかった。ポリオキシン耐性株を得て、上記メラニン合成経路欠損遺伝子をもつ株と交雑実験を行った結果、連鎖関係にないことが明らかとなった。
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