研究概要 |
抵抗性を異にするダンコン品種の罹病組織での本菌の行動を比較検討したところ, 両品種間では生育速度に差異があるが, 光学顕微鏡下ではその形態に著しい差異を認めなかった. 本菌を培養するため分生子と罹病組織を用いて種々の培地上での生育を調べた. ムギ類黒さび病菌用の培地に種々の物質を添加した培地では生育促進が認められなかったが, クノップ液では発芽管伸長促進が認められた. ダイコン根と葉の摩砕液は分生子発芽を著しく阻害したが摩砕液透析内液は発芽管伸長を促進した. 透析内液をセファデックスG-100で分画した第5分画では発芽管伸長促進効果が著しかった. 溶液中では付着器形成が悪いので各種の膜を使用した. 膜上では発芽率が高く発芽管も長い場合が多く, ポリカーバメート膜では著しく長かった. 一般に膜上では付着器形成がよく, 付着器から侵入菌糸が伸長した. 特にタマネギ鱗茎表皮では付着器形成率が高く, 侵入菌糸が細胞間隙を生育した. しかしこれらの菌糸は培地上に生育しなかった. 罹病組織からの培養を試み前述のクノップ液培地を用いたところ吸器様構造物の形成数が著しく増加した. この培地に酵母エキス, レバーエキス, カゼイン水解物, 肝油, ミネラル及びレバーをそれぞれ添加した培地では吸器様構造物など器官の形成には特に促進効果が認められないが, 肝油とミネラル添加培地で局部的に菌糸の生育促進が認められた. 透析内液培地では切片当り菌糸数, 菌糸長, 吸器様構造物の形成率が増加し, 分画5培地でもすべての点で促進された. 根摩砕残渣煎汁液培地では吸器様構造物が多く, 菌糸の生育が特に優れていた. 根細胞間隙液培地も吸器様構造物が多かった. 以上のように本菌は培地上にすべての器官を形成した. しかしその生育期間は短いのでこれを延長する方法を検討した. 培地中に木綿糸を添加したり培地上に人工膜を使用したがこれにより生育が特に促進される結果を得ていない.
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