研究概要 |
1.多様な原子価を発現する元素である砒素のうち, 亜砒酸(AS^<II>)と砒酸((AS^V)の分別定量法について検討し, チオナリド法で精度よく分別定量できることを明らかにした. 2.旧松尾鉱山から流出する強酸性鉱山水に含まれる砒素を分析し, 砒素の溶存形態と溶存量-また溶存形態の変化について検討した. その結果, 当鉱山水には多量の砒素ガ亜砒酸の形態で含まれており, 時間とともに砒素の形態が急速に変化すること(AS^<III>→AS^Vでの酸化現象)が認められた. 3.強酸性鉱山水における砒素の形態変化には, 微生物が重要な役割を演じていることが明らかになった. 多数の砒素耐性菌を現場の試水から分離し, その中から最終的に6菌株の砒素酸化最近を純粋分離した. 4.分離した6菌株の細菌について, 多数の表現型諸性質および化学分類学的諸性質(形態, 生理的性質, 生化学的性質, DNA-GC含有量, ユービキノン系など)を調べて, その分類学的特徴を明らかにした. その結果, 砒素酸化細菌は, 真正の好気性, 好酸性の従属栄養細菌(acidophilic heterstroph)であり, 6菌株間にはほとんど差異は認められなかった. 5.今回検討した結果から, 強酸性鉱山水から分離された砒素酸化細菌は既報の砒素酸化細菌とは明らかに異なり, 分類学的には新しい属(Audiphilium)に位置するものと考えられた. 更にDNA相同性, 脂肪酸組成の分析が必要である. 6.微生物的砒素酸化のメカニズム, 鉱石・土壌中における砒素の存在形態や存在量などについては, 今後の重要な課題である.
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