研究概要 |
火山性黒ボク土, 非火山性黒ボク土, 沖積土の耕地土壌1.6点について, 陰イオン交換樹脂および溶媒抽出法を用いて, 土壌からのリンの脱着について研究した. 溶媒法としては2.5%酢酸法, Bray NO.2法, Olsen法を用い, 陰イオン交換樹脂法はアンバーライトIRA425をつめたresin-bagと土壌懸〓液との接触による土壌中のlabileリンの脱着過程を恒温で時間と共に追った. 陰イオン交換樹脂法による土壌リンの脱着曲線から, 同一地区の土壌でも土地利用や施肥の差などにより, リンの脱着過程に変化があることがわかった. また各種溶媒抽出法の中ではOlsen法が最も陰イオン交換樹脂法との相関が高く, labileリンの評価に有効であると思われた. 陰イオン交換樹脂による72時間までの土壌リンの脱着過程から, 脱着の機構について検討した結果, 火山灰土と非火山灰土壌の間には大きな差異があることが推定された. すなわち火山灰土と非火山灰土との間には脱着反応の初期において顕著な差異が見られた. 非火山灰土では土壌の種類,利用状態にかかわらず, リンの脱着は拡散に支配されており, 反応連度もほとんど変らないのに対し火山灰土では, 脱着の初期においてリンの脱着量が少なく, その脱着機構は拡散に左右されているとは考えられない結果になった. 次に第2の研究である土壌中の難溶性リンの微生物によるlabile化については, 土壌群, 植生を異にする50点の土壌について, リン溶解菌, 有機態リン溶解菌の菌数を調査した. リン溶解菌の存在量は土壌の種類, 植生の相異などによって異なることが判明したが, その因果関係については不明であった. リン溶解菌の存在量は根圏土壌において非根圏土壌に比してやや高い傾向が見られた. また特定の土壌群について見ると, 土壌の全炭素含量とリン溶解菌含量との間には弱い相関々係が見られた.
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