研究概要 |
酵母は栄養学的には良質の蛋白質を含み, 又グリコーゲン, 各種ビタミン等多くの栄養素を含んでいる点で飼料及び食糧用として適したSingle Cell Proteinの材料といえる. 酵母を飼料化あるいは食糧化する際の問題点は, 強固な細胞壁の存在による消化効率の低さがあげられる. この問題を解決する手段として筆者らは細胞壁が物理的, 化学的に弱い変異株をつくり出すことを考え, 以下の結果を得た. 1.酵母細胞壁変異株の取得 パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)X2180-1A半数体野生株を親株として化学変異剤, ニトロリグアニジン処理により, 上記目的に合った細胞壁変異株を得ることに成功した. この変異株は酵母細胞壁溶解酵素, Zymolyaseに対して強い感受性を示した. 特にN3株, N3-8株, N3-24株の3株は菌の生育の各時期を通じて常に細胞壁溶解酵素に対する感受性が著しく強く, 目的に沿った株といえる. 2.酵母細胞壁変異株の諸性質 得られた変異株細胞より蛋白質を2M, NaCl, 1%TriTouX-100, 1M, NaOH, 1M, NaOH, 1M, CH_3COOHにより段階的に抽出し, それぞれの画分の蛋白含量を比較したところ, 最も緩和な条件である2M, NaCl抽出画分においてN3株は野生株の1.7倍, N3-8株は31倍, N3-24株は5.8倍という結果を得た. このような細胞内蛋白質の抽出量の著しい増加は当初目的としてあげた飼料化, 食糧化という点で, より好ましい材料を提供するものと思われる. 3.変異株細胞壁の科学的性質 変異株細胞は表層に存在するmannanの側鎖欠損株であると同時に, 細胞壁骨格多糖B-glucanの1, 3-結合, 1, 6-結合の割合が大きく変化していることが明らかにされた.
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