研究概要 |
我々はデキストランの生合成機構の解明を目的とした研究を進めているが本研究では特にデキストラン合成酵素の糖移転能に着目した酵素タンパク質の修飾に関する基礎的知見を得ることを主たる目的とした. 1.阻害剤の反応速度論による基質結合部位の解析 デキストラン合成酵素の活性中心における基質ショ糖およびデキストランの結合部位を検討し, 両基質は酵素の活性中心内で独立した部位に結合することを明らかにした. 2.菌株間の糖転移活性の比較 糖転移能の解析にはL.mesenteroides NRRL B-512F株が最適であるとの結論が得られた. また, UV, 蛍光の測定により小スケールでの転移活性の簡便な定量法が確立された. 3.デキストラン合成酵素の化学修飾 糖質分解酵素としてTAA, ホスホリラーゼなどを例とし, カルボキシル基, His残基の化学修飾を行なった結果, いずれも触媒反応に重要な働きをしているアミノ酸残基であることが示唆された. デキストラン合成酵素の場合にもEDC, DEPによる特異的な修飾が示された. 4.デキストラン合成酵素の親和標識 TAA, ホスホリラーゼはそれぞれ, OPA, Dial-CDによって特異的に失活することが示され, デキストラン合成酵素の親和標識剤としての有効性が証明された. 化学修飾の結果から本酵素のカルボキシル基の重要性が示されたことは, CD-epoxdの作用と適合し, 活性発現に必須なカルボキシル基の存在を明示している. 5.総合考察 本研究ではα-1, 4-グルカンに作用するTAA, ホスホリラーゼなどを対照として化学修飾と親和標識を行なった結果, 活性発現に必須なカルボキシル基の存在が推定された. 今後は, 反応性の変化を中心とした修飾法を試み, デキストラン合成酵素の新しい機能の開発を目指したい.
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