| 研究概要 |
鶏に筋胃潰瘍を起こさせる物質ジゼロシンは, 生体に投与すると胃酸分泌を亢進させることを筆者らは既に明らかにしている. 本研究は, 単離胃粘膜細胞を用いて, この胃酸分泌亢進作用の機構を明らかにしようとしたものである.
まず, 胃酸分泌亢進を酸素消費量で測定する方法により, ジゼロシンの作用を調べた. その結果, ジゼロシンはヒスタミンに匹敵する濃度で細胞の酸素消費を亢進する作用があることが確認された. そして, この作用は, ヒスタミンのH_2-レセプターのアンタゴニストであるシメチジンによって完全に制御されることを示した.
次に, ジゼロシンが細胞内の環状アデニル酸濃度を上昇させることにより胃酸分泌を亢進させる可能性を調べるため, 環状アデニル酸を分解する酵素ホスホジエステラーゼの阻害剤の存在下で酸素消費量を測定したところ, 非存在下に比べて, 大幅な酸素消費の亢進が認められた. この結果はジゼロシンのセカンドメッセンジャーが環状アデニル酸であることを示唆していた.
さらに, ジゼロシンのこの作用を実証する目的で, 細胞内の環状アデニル酸量をラジオイムノアッセイ法により測定した. その結果, ジゼロシンは, 実際に細胞内の環状アデニル酸濃度を上昇させること, その作用はヒスタミンと比べて約1000倍大きいこと, この作用はシメチジンにより阻害され, ピリラミンでは弱い阻害しか受けないこと, 等を明らかにした.
以上の結果にもとずき, ジゼロシンの胃酸分泌促進作用は, まずジゼロシンが, 胃粘膜細胞のヒスタミンH2-レセプターに作用し, 細胞内の環状アデニル酸濃度を上昇させることによって行われるものと結論した.
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