研究概要 |
1.マウス脾臓細胞と3種のマイトゲンを用いる検索法により、特異的な活性を示した10株から、特に作用が顕著であり、再現性の良好な放線菌D-48株を選択し、その活性成分を培養菌体よりアセトン抽出,酢酸エチル抽出,シリカゲルクロマトグラフィー,Sephade×LH-20クロマトグラフィー,高速液体クロマトグラフィーを用いて単離した。本物質は、質量分析,核磁気共鳴を含む各種物理化学的性質の解析結果から、最近報告された新規免疫抑制剤FR-900506と同一または類縁物質と考えられる。 2.Streptomyces hiroshimensisの培養菌体より単離された、Prodigiosin 25-C(PrG25C)およびMetacycloprodigiosinは、初期的な解析結果から、マウス免疫系細胞にたいし同様な効果を有すると考えられたので、その作用機構を前者につきさらに詳細に検討した。PrG25Cは、T細胞増殖において、その増殖因子であるインターロイキン2(IL2)の産生、IL2受容器の形成を全く阻害しない濃度で、IL2に対する反応性を強く抑制した。またリンパ球混合培養法ならびにCon Aレクチンによるキラー誘導、Con Aによるサプレッサー誘導を同程度に強く抑制した。一方、B細胞による羊赤血球を抗原とする抗体産生に対する抑制効果は弱かった。また、マクロファージの糖代謝、インターロイキン1産生に対しては、用いた濃度で抑制が認められず、リンパ球に比較し感受性ははるかに低いことが示された。PrG25Cに高い感受性を有するT細胞ブラストを用いて、高分子合成に対するPrG25Cの効果を放射性前駆物質の取り込みを指標として検討した結果、DNA,RNA,蛋白合成とも顕著な抑制を受けず、PrG25Cの第一次作用点が一般的な高分子合成過程にはないことが示唆された。以上より、PrG25Cはマウス免疫系において、特に細胞性免疫機能の発現を選択的に抑制することが明らかとなった。
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