研究概要 |
我々が細胞選抜により確立した光独立栄養培養細胞は発達した葉緑体を持っており, 試験管内における光合成機能の解析, さらには機能開発の目的に適していると考えられる. このことを明かとするため, このタバコ光独立栄養培養細胞を用い, 種々の作用を持つ除草剤の作用を検討するとともに光合成阻害型除草抵抗性細胞の選抜を行った. 光独立栄養細胞, 光mixotrophic細胞, 従属栄養細胞, ならびにタバコ実生との感受性の差を検討した. 培養細胞のうち光独立栄養細胞が最も光合成阻害型除草剤に対する感受性が高く, 次いで光mixotrophic, 従属栄養細胞の順であり, 栄養状態の差が光合成阻害剤の作用性に大きく影響していることが明らかとなった. また植物体(実生)との比較より, 光独立細胞の感受性は植物体の結果とよく一致することが明らかとなった. 以上の結果より, 光合成阻害型除草剤抵抗生株確立のためには, 光独立栄養細胞が最も適切な材料であると判断された. 実際に光独立栄養培養細胞を用いて光合成阻害型除草剤(アトラジン)に対する抵抗生細胞き選抜を検討したところ, 致死濃度のアトラジンを添加した場合にも緑化する細胞があることを認め, 培養細胞集団内に抵抗生細胞が混在することが明らかとなった. しかし, 光独立栄養状態では抵抗性株の確立は困難であった. 光独立栄養培養の可能な光mixotrophic細胞を致死濃度のアトラジンを含む培地で連続的に選抜培養し, 緑化してくる細胞選抜し, さらに光独立栄養条件で再度選抜することにより抵抗性細胞を得た. この抵抗性細胞はアトラジンに対し約200倍, Diuronに対して約20倍高い抵抗性を示し, その抵抗性は安定していた. また, されら除草剤の標的タンパク質であるQ_Bタンパク質遺伝子(psbA)の塩基配列を決定したところ, 従来報告されていない新しい変異であることが明らかとなった.
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