研究概要 |
成熟した血液細胞は一定の寿命があるので生体は成熟細胞を常に供給し続けねばならない. この供給は末分化な幹細胞の分化増殖により達成される. 分化増殖をコントロールするのは血液細胞の分化過程に特異的な作用する体液性因子である. 赤血球細胞の分化過程にはBFU-E及びCFU-Eと呼ばれる細胞集団があり, それぞれの集団に作用して分化増殖を促進する因子BPA(バースト形成促進因子)及びEp(エリスロポエチン)の存在が知られている. BPAは分化の初期過程に位置するBFU-Eに作用し, Epは後期過程に位置するCFU-Eに作用する. Epについては分子生物学的研究が進展し, その性格が明らかにされているが, BPAについては不明な点が多い. 本研究はBPAの性質を明らかにするためにBPAを精製することを目的として行ったものである. 再生不良貧血患者尿よりまずEPを単離し, その残りの部分にBPA活性を認めたのでDEAE-セファディクス, セファディクスG-100, ハイドロオキシルアパタイト, セファクリルS-200, モノQ, モノS, プロRPCなどのカラムクロマトグラフィーにより約10万倍に精製した. BPAは糖蛋白質であり, 非常に会合しやすい性格を持っていた. Ep及びBPAを使用し, ヒト血液中のBFU-Eに対する作用をメチルセルローズ半固定培地中で形成されるコロニーを観察することにより研究した. Epの添加のみでもコロニーは形成されるが, BPAを添加するとコロニーの数は増加し, またコロニー形成に必要なEp量を著しく低下させた. BFU-EにはEpに応答する集団とEpに応答しないより末分化な集団があり, BPAは両集団に作用する. BPAはコロニーのサイズを大きくし, また細胞当たりのヘモグロビン含量を増加させる.
|