研究概要 |
申請時の当初の目的の1つは, 著者が発見したフィチン酸特異的フィターゼのフィチン酸分解産物である, イノシトールー三リン酸がどのような意味をもつかであった. この点は著者の論文を読んだ Perstorp Carbotec社が分析を試み, イノシトール 1,2,3-三リン酸であると同定し, セカンドメッセンジャーとして知られているイノシトール 1,4,5-三リン酸とは異なるものであることが分かった. また, 花粉の培養によってイノシトールー三リン酸が蓄積しないことから, フィターゼの特異性は生理的に意味がないものと推定した. また, ホスファターゼの活性測定より, イノシトールー三リン酸を分解する酵素がガマ花粉中に存在することを証明した. ガマ花粉には確かにフィチン酸が存在することが,抽出液の Dowex カラムクロマトグラフィによって明らかになったが,フィチン酸は培養初期よりも花粉管がある程度伸長してから消失することより, 花粉管伸長のために利用される可能性を指摘した. カルモジュリンに関しては, ガマ, マツおよびトウモロコシ花粉から純化を試みたが,この4年間の実験結果から結論的には, 花粉のカルモジュリンはヘテロ型として存在していると言わざるを得ない. 純化したカルモジュリンは同程度の比活性をもつので, ほぼ均一に近いと思われるものの, 電気泳動でCa^<2+>とEGTAの存在下で複数のバンドを示した. また, 花粉1gあたり, 0.05-0.10mg含まれていた. カルモジュリン結合タンパク質については, ガマ, マツおよびトウモロコシ花粉抽出液には, 電気泳動でCa^<2+>とEGTAの存在下でほぼ同一の移動度のところに異なるバンドを観察した. ガマ花粉抽出液については DEAE-セルロースクロマトグラフィを行なった画分について, 電気泳動を行ない, Ca^<2+>とEGTAの存在下で数個の移動度の異なるバンドを確認した. この同定は現在進行中である.
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