研究概要 |
医薬、動物飼料添加剤、アミノ酸発酵制御因子として知られるビオチン(ビタミンH)の生分解系について本申請者らは酵素レベルで研究している過程で、ビオチン資化性細菌よりビオチニル-CoA合成酵素(BCS)を初めて均一に精製することに成功した。本研究では、本酵素の酵素化学的性質を究明するとともに、本酵素を用いて、従来化学合成法では困難であった有用なビオチン関連化合物の酵素的合成法の確立およびビオチンの新しい酵素的定量法の確立を行うことを目的とした。Mycoplana sp.No.166より均一に精製したBCSは【Mg^(2+)】およびATPを要求し、ビオチン次外にデチオビオチン,アクチチアジン酸にもビオチンの約50%作用した。ビオチンをATPからビオチニル-CoAとAMPが生成することを明らかにした。次にBCSとアシル-CoAオキシダーゼ(ACO)を用いて抗生物質として知られるα-デヒドロビオチン(α-DHB)の酵素的合成法を試みた。まず、有機合成したビオチニル-CoAに対してACOが作用してα-DHBを生成することを認めた。そこでビオチン,CoAを含む反応液中でBCSとACOのカップリングによるα-DHB生産の最適化を行い、24時間反応で0.7mg/mlのα-DHBを合成することができた。反応生成物を精製して10mgの針状の白色結晶として単離し、NMR、マススペクトル等により、α-DHBと同定した。さらにBCS,ACOおよびパーオキシダーゼを用いるビオチンの新しい酵素的定量法を開発した。この3酵素を用いるビオチン定量系における、定量性,感度に対する基質量,酵素量,反応時間等の最適化を行った結果、2時間の定量操作で5〜200μΜのビオチン濃度において直線性を示した。その感度はバイオアッセイに匹敵するものであった。
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