研究概要 |
アミノアシラーゼは各種のアシルアミノ酸に作用して脂肪酸とアミノ酸に加水分解する酵素で, 動植物, 微生物に広く分布しているが, 酵素の精製例は乏しく, 酵素化学的性質の解明は進んでいない. 本研究は好熱性微生物を対象としてアミノアシラーゼを検索し, 酵素を均一に精製するとともに, 基質特異性などの酵素化学的性質を解明する目的で行ったものである. また, 熱安定性が高く工業的応用の際に有利な耐熱性酵素を用いる効率の高いDL-アミノ酸光学分割システムの開発を目ざした. 得られた研究成果の概要は以下に示すとうりである. 1.アミノアシラーゼの反応速度を直接測定する新しい酵素活性測定法を開発した. すなわち, α,β-不飽和アミノ酸のN-アセチル化合物の一種であるα-アセトアミドアクリル酸が本酵素によりピルビン酸, 酢酸, アンモニアに加水分解されるので, 生成するピルビン酸をNADHとアラニン脱水素酵素で定量する方法を考案した. 2.各種の好熱性細菌にアミノアシラーゼ活性を見出し, Bacillus thermoglucost diusDSM2542株細胞から耐熱性アミノアシラーゼを均一に精製した. 3.分子量, 基質特異性, 物理化学的安定性, 補欠金属など耐熱性アミノアシラーゼの酵素化学的諸性質を解明した. 4.Bacillus stearothermophilusIFO12983株の細胞よりアミノアシラーゼ活性をもつ耐熱性ジペプチダーゼを精製結晶化し, 酵素化学的諸性質を解明した. 5.アミノアシラーゼとジペプチダーゼの酵素化学的性質を比較し, 両酵素が共通の祖先酵素から分子進化したことを推論した. 6.耐熱性アミノアシラーゼとフェニルアラニン脱水素酵素を用いてL-フェニルアラニンを高効率に生産する新しい酵素的方法を開発した.
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