研究概要 |
1.鉱山廃水, 河川水, 畑土などから多数の好酸性従属栄養細菌を分離した. この中の6株の菌学的性質を詳しく検討し, Acidiphilium属と同定した. 2.分離菌株から, 23株のニッケル耐性菌(100mM)と16株のコバルト耐性菌(100mM)を選択した. 後者の耐性は鉄イオンの存在で著しく増加し, 菌の生育も促進された. 3.Acidiphilium sp.24Rからピルビン酸資化性変異株(24R-M)を調製した. 24R-M株を用い, T.thioocidansの培養液に蓄積されたピルビン酸の84%を除去することが出来た. 4.T.thioocidans ON106株を大量培養し, この培養液を除菌後, これでAcidiphilium sp.の6株及び24R-M株をそれぞれ培養した. 培養液を再除去したものを培地として用い, ON106株の生育を検討した. 24R株及び24R-M株で処理した培養液では, ON106株の生育は5日後で1.85倍及び, 2.85倍であった. しかし, これらのON106株の生育においては, 途中で一時的に菌数が減少し, 再び上昇する経過が認められた. この原因について種々検討を加えた結果, Acidiphilium属細菌は, pHの低い環境下では培地中にポリアミンを放出し, これの酸化生成物が過酸化水素であるため, カタラーゼ活性を持たないON106株の生育が阻害されると考えられる結果を得た. 5.またT.thioocidans自身も強酸性環境下では, 培養液中にポリアミンを放出していることがわかった. 以上の結果から, 従来ピリビン酸による生育阻害と考えられていた対数期後期からの急速な死滅期への移行は, ポリアミンの酸化生成物による生育阻害にも原因があることを明らかにすることが出来た. ピルビン酸による生育阻害は, 調製した変異株により除去することが出来たが, 過酸化水素による阻害も, 現在使用されているバクテリア・リーチングの系には多量の鉄イオンが含まれているため, 科学的な酸化により軽減されることが考えられる. 従って鉄イオン存在下におけるAcidiphilium属細菌の金属耐性の増加と相俟って混合培養は可能と考えられる.
|