研究概要 |
新規補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)は代謝上重要な酵素の多くで補酵素として機能していて, PQQが非共有結合型で存在している酵素については既に多数の研究を行ってきた. 一方共有結合型PQQを含む酵素の場合, PQQの存在を証明するには多大な困難をともなう場合が多い. 哺乳動物のアミン酸化酵素やコリン脱水素酵素にPQQが共有結合型で存在することの証明は画期的な成果であった. 本研究は, PQQの存在の証明をさらに進めて, フラビンを含む酸化酵素にもPQQ関与があることを示すことを企図して行った. 過酸化水素生成を伴う反応を触媒する酸化酵素で, フラビンを含むもののうち, アミノ酸酸化酵素, グルコース酸化酵素, キサンチン酸化酵素のほか, 補酵素未同定はウリカーゼやアスコルビン酸酸化酵素などを選んで, その加水分解物中にPQQを含むクロモフォアの検出, 単離を行った. 一方で, そのようなタンパク質から切り出されてくるPQQを含むクロモフォアの酵素定量法についても検討を加えた. さらに本研究と深く関連するところで, オランダの研究グループによって提唱されたPQQクロモフォアは補酵素活性を示さないという意見は申請者らの意見と対立するものであったため, ウシの血清タンパク質をモデルとして, PQQ付加物の形成させ, このものの加水分解物からPQQクロモフォアの単離同定を行うとともに, 放射性PQQを用いて申請者による実験結果が正当なものであることを示した. 本研究の結果は, フラビンを含む酵素はすべてPQQを含むことを意味しておらず, 細胞と外界との境界に位置して機能し, かつ外界の基質が細胞内へとり込まれるところで機能している含フラビン酸化酵素にPQQが含まれる可能性が高いことを示した.
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