研究概要 |
(1)ヒメバチの一種Venturia canescensの産卵行動開発物質の解明 貯穀害虫であるマダラメイガ類4種に共通して寄生するヒメバチの一種の産卵行動を解発させる寄主由来のカイロモンを、4種のそれぞれの寄主から精製した。カイロモンの骨格はすでに報告されている2-acy1-cyclohexane-1,3-dioneであったが、acyl基が4種の間で微妙に異なり、質的両的相違即ち種特異性があることを確認した。 (2)ヒメバチの遠距離誘引物質の解明 寄主由来の抽出物を与えるとヒメバチの行動が活発になる。活性物質を探索し、4-ノナノライドと同定した。活性試験を客観的に評価するため、触覚を材料に匂い物質による神経の興奮電位を計測するEAG法をヒメバチに応用する目的で改良した。試験したγ-ラクトンの中では4-ノナノライドが最も強力であり、EAG法が利用価値のあることを実証できた。 (3)メイガコマユバチの寄主認識麻酔行動解発物質の解明 ヒメバチと同様にマダラメイガ類を寄主とするコマユバチのカイロモンをスジマダラメイガを材料にして精製単離し、各種機器分析と化学反応を組み合わせて、その構造を9、10-ジヒドロキシ-シス-12-オクタデカン酸と決定した。合成物は天然物の1/10ではあるが顕著な活性を示した。なお協力物質の存在も予想されたが、この物質は動物由来としては最初の例である。 (4)シバンムシアリガタバチのカイロモン 近年都市部で大発生し重大な衛生害虫であるシバンムシアリガタバチの寄主探索確認カイロモンを、タバコシバンムシの蛹室より精製した。活性成分は複数であり、2成分について化学的性質が解明できた。1成分はステロイドの脂肪酸エステル、他の成分は分子中に3個以上不飽和二重結合を含むトリアシルグリセロールであった。
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