研究概要 |
細菌が薬剤耐性を獲得する過程の一つとして野性株が変異株(耐性株)から薬剤耐性プラスミドを受け取り、耐性株となることが知られており薬剤耐性菌の蔓延という大きな問題の原因となっている。本研究に使用した腸内細菌であるStreptococcus faecalisの変異株(OG1SSp(pCF-10))は、臨床的に分離された菌株で、テトラサイクリン耐性プラスミド(pCF-10)を保有している。このプラズミドは、テトラサイクリン感受性株(FA2-2(pAM351))が分泌する性フェロモン(cCF-10)により誘導される両菌の接合により伝達される。性フェロモンcCF-10の精製は、OG1SSp(pCF-10)の自己凝集活性を指標として行なった。まずFA2-2(pAM351)株の除菌培養液を順次AmberliteXAD-2,DEAE-Sephodexにより部分精製した。さらに溶媒系を変えながらODS,CNによる逆相HPLCを合計6段階行うことによりcCF-10が単離された。精製効率は、15,000万倍であり、60リットルの培養液より約4μgが得られた。OG1SSp(pCF10)株の自己凝集活活(CIA活性)においては、0.025ppbの濃度で活性を示しすでに単離されている3種の他の性フェロモンと同等の活性を示すことが確認された。本物質は、ペプチド性物質でありFAB-MSスペクトルの測定結果などから、バリン3モル,ロイシン2モル,スレオニン,フェニルアラニン各1モルからなるヘプタペプチドであると考えられた。気相式自動アミノ酸配列分析装置により配列分析を試みたが、本物質は非常に極性が低く溶媒により洗い流されてしまうために、配列分析は不調に終った。そこで現在、さらに大量の菌を培養し、多量の精製試料を得て、手動エドマン法により配列分析を行おうとしている。
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