研究概要 |
1.活性酸素による多糖の酸化 活性酸素の生成系としてアスコルビン酸-銅イオン(ASA-Cu)系を用いてペクチン, ヒアルロン酸など多糖と室温で反応させると顕著な低分子化が起きた. この反応性は分子量が5×10^3以上で高く, またグリコシド結合が(1, 4)よりも(1, 6)結合で高かった. このことは, 銅イオンを分子内に捕捉し易いもの程反応性が高いこと, 即ち酸素ラジカルの生成が容易であることを示すものであった. グリコシド結合は構成糖の1, 2, 3位の水素引き抜き反応の結合, ペルオキシラジカルが生成し, 隣接のCC結合が切断されるため, 二次的に開裂が誘導されるものと考えられた. 2.活性酸素によるタンパク質の特異的酸化 タンパク質は本来金属イオンと取り込み易い性質を有するもので, 牛血清アルブミン(BSA)を用いて多糖の場合と同様にAS-A-Cu系と反応させた所, 著しい低分子化を引き起した. しかもアミノ酸分析ではヒスチジンとトリプトファン残基の欠損は著しかったが, その他アミノ酸においては全く変化がなかった. そして特定アミノ酸の酸化分解とタンパク分子の低分化は直接関連はないものと考えられた. またこの酸化反応には銅イオンと, スーパーオキシドに起因する過酸化水素が必須なものであった. 3.活性酸素によるヒスチジンの酸化開裂機構 ヒスチジンのモデルとしてN-ベンゾイルヒスチジンを用い, AsA-Cu系と反応させヒスチジン残基の酸化開裂機構を調べた. HPLCで調べると8種類の反応生成物が見出されたので, これらを分離, 精製し, 構造決定した. 生成物の中, 2-オキソ誘導体が主生成物で, 4種類はイミダゾール環の開裂生成物であった. これらの結果より, OHラジカルがイミダゾール環に付加して2-オキソ体を生成し, これが更に酸素ラジカルの作用でC_4-C_5位が開裂して, 最終的にはアスパラギン酸を生成するもであった.
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