研究概要 |
揮発性成分はそれぞれ異なる化学特性をもち, その多様性のため単一の分離法での分離は困難である. 用いた分離法が分析結果に大きく影響するので, 分離した揮発成分濃縮物に質的・量的変化を起こさない分離法が望まれる. また, 試料を少量しか用いることのできない場合, さらに分離は困難となる. これらの問題に対応した分離法を検討した. 1.吸着剤の選択的吸着特性の検討. : 活性炭, Tenax-GCは選択的な吸着能をもつので, それを検討した. その結果, 活性炭は広く揮発性成分を吸着するが, Tenax-GCは選択性を示しモノテルペン炭化水素化合物の保持能は弱く, 含酸素テルペン, セスキテルペンをよく保持し, これらの選択性を精油の分画に利用できることを見い出した. 2.Serial-Trapping法. : シリカゲルカラムクロマトにかわる方法として, 微量のサンプルの精油成分分画法を検討した. 活性炭(20mg)とTenax-GC(20mg)の直列連結した吸着カラムによるSerial-Trappingにより微量の精油から炭化水素モノテルペン, 含酸素テルペンおよびセスキテルペン区分に分画する方法を開発した. 3.柑きつ類果皮精油成分の分析への応用. : 上述のSerial-Trapping法で定性的分析を行い, 連続蒸留抽出法を併用して白柳ネーブル果皮精油の香気成分を定量分析した. GC/MSによる同定にKovats Indexを補助手段とし, 炭化水素類9成分, 含酸素化合物59成分を同定した. さらに, 白柳ネーブル果皮精油の特徴的香気にとって重要な9成分を明らかにした. また, スダチ果皮中の揮発成分として炭化水素類28成分, 含酸素化合物65成分を明らかにした.
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