研究概要 |
1.夛摩丘陵・下総台地・猿投山地前縁部の各2ケ所の0次谷において, 野外定水位透水試験, 簡易貫入試験, 土壌腐植含有量試験を実施した. その結果, Nc値が5以内の土層では透水係数が大きくなること, また, 透水係数は, 地質・地形・土壌の発達状態によって支配されることも分った. 2.御殿峠礫層・蓮光寺互層がほぼ水平に重っている夛摩丘陵にある東京農工大学の夛摩試験地内の山腹斜面を削り, 比較的新鮮な地層を出し, 各地層について, 浸出水の量水と野外透水試験を行い降水量との関係を見た. その結果, 降水量と透水係数との関係はあまり見られなかったが, 浸出水との間では関係が見られた. 御殿礫層で, 浸出水量は降水量の増加に伴い増加するが, 蓮光寺互層の泥岩層・礫層・砂礫層共に, 浸出水量は降水量が50mmに達すると, 増加が見られなくなることが分った. 3.東京農工大学の夛摩試験地の東の沢と南の沢の2ケ所の0次谷にトレンチを設け流出成分ごとの流出量を観測し, 降水量との関係を解析した. 東の沢では, 表面流出量は総降水量の増加に伴い増加する傾向があるが, 中間流出量, 地下流出量は共に総降水量がおおよそ100mmを境いにして, それ以上の降水量があっても増加しないことが分った. 南の沢では, 表面流出量は東の沢と同様な傾向を示すが, 地中流出量は分離したどの成分についても, 総降水量が約50mmを境いにして, 増加が見られなくなることが分った. また, 地中流出量の内, パイプ流出量が約85%を占めることが分った. このことから, 土層の断面の排水能力に一定の限界があること, また, 地中流の中でパイプ流が重要な役割りを果していることが確認された. 4.1次谷の表層地下水の変動の観測結果を再検討した結果, 谷底に滞水域の存在が確認され, 更に, この滞水域が季節的変動のあまりない安定したものであることが明らかに出来た.
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