研究概要 |
昭和61年, 62年の2年間にわたり, 組織培養法による抵抗性マツの苗木生産について研究を行った. 初年度は天然生無抵抗性クロマツ, アカマツの種子を用い, 2年度は前記の種子および天然生抵抗性クロマツの種子を用いて, 以下に示す各段階の培養条件を検討した. すなわち, 種子から無菌的に胚を摘出し, 各種濃度の培地上で, (1)不定芽の誘導, (2)子葉の増殖・生長, (3)不定根の誘導, (4)小植物体の再生, について実験を行った. その結果, 次の成果が得られた. 1.すべての段階で, 培地はGresshof & Doy(GD)の2/3倍無機栄養素を含む培地(以下GD修正無機培地と略), 培養は温度21±1°C, 照度6000〜9000ルックス, 14〜16時間光周期が最適であった. 2.不定芽の誘導には, GD修正無機培地にナフチル酢酸(NAA)0.02ppm, ベンジルアミノプリン(BAP)0.5ppmの培地が最適であった. 3.幼芽・不定芽の生長には, BAP無添加のGD修正培地が有効であった. 4.子葉の増殖・生長には, BAP無添加のGD修正培地に活性炭を添加した培地が有効であった. 5.不定根の誘導には, GD修正無機培地にNAA0.02PPm, インドール酪酸(IBA)0.6ppm, リボフラビン2.0ppmを添加した培地が最高であった. 6.小植物体の再生には, 栄養素を含む寒天培地より同じ栄養素を含むバーミキュライト培地の方が有効であった. 以上のように, 無抵抗性および抵抗性マツの胚から小植物体を複数再生することに成功した. しかし, まだそれぞれの段階における培養条件の改善(培養期間の短縮, 増殖率の向上など), さらに再生された小植物体の抵抗性の確認実験が残されている. 引き続き研究することが望まれる.
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