研究概要 |
1.北山川流域の複層林施業林分(なすび伐り林業)は, 近年, 急速に消滅しつつある. 理由は皆伐一斉林施業にくらべて, 利点よりも欠点の方が大きいからである. 複層林推進対策には, その点の配慮が必要である. 2.現存する複雑林施業は, 択伐方法, 更新方法, 樹種, 林分構造は多様で, 一定の類型に集約しがたい. この事実から, なすび伐り林業は育林技術として発達, 体系化されたものではなく, 採取利用技術として展開され, その結果として複層林が形成されたものと考察される. 3.理想と思われる, なすび伐り林分の構造モデルは, 次のように示される. (1)主木の本数:850本/ha, (2)主木の混合割合:スギ10%, ヒノキ90%, (3)主木の蓄積:400m^3ha, (4)主木の蓄積分配:大径木50%, 中径木30%, 小径木20%. 4.ヒノキ主体のなすび伐り林分については, 次のことが明らかとなった. (1)上層木:胸高直径と樹冠直径との間には, 明瞭な線形関係が認められた. この場合, 各測定値の回帰直線からの隔たりは胸高直径に関係なく, ほぼ一定であった. (2)下層木:樹高と樹冠直径との間には, 明瞭な線形関係が認められた. この場合, 各測定値の回帰直線からの隔たりは, 樹高に関係なく, ほぼ一定であった. (3)樹高曲線:上層木・下層木ともに直線で近似できた. この場合, 直線の傾きは下層木の方が急であった. ただし, これらの結果は, 2つの標準地調査によるものなので, なすび伐り林分の全体に当てはまる傾向であるかは疑問である.
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