研究概要 |
1.森林生態系における水溶性養分物質の垂直変化: 林外雨, 林内雨, リター層から5, 10, 20, 30, 50, 70cm土壌層にいたる土壌流出水さらに渓流流出水の水質分析を月2〜4回おこなった. 各土壌層の土壌流出水は, 内径19.5cmのそれぞれの長さの塩化ビニール製パイプを埋設してその流出水を採取した. どの溶存物質濃度も林外雨にたいし林内雨で増加した. 土壌層を通過しつつその濃度を減少したのは, NH_4-N,org-N,P,K,Cl,SO_4であった. 一方, NO_3-N,Ca,Mgは, 土壌層において濃度は増加し, 70cm層で一定にちかずく傾向をしめした. 2.降水と渓流流出水の季節変化: 降水で明らかな季節変化をしめしたのは, NaとClであった. 北西季節風に伴う海塩の影響であろう. 冬期に高い濃度がみられた. アニオンであるClには渓流流出水にもその影響が認められた. 渓流のNO_3-N濃度は, 4月から夏期へ生物的活性の上昇とともに増加し, 晩秋, 最高となった. 植物根による吸収とのバランスによるものであろう. 融雪期一時的に濃度が増加するのは溶脱によると考えられる. SO_4,Ca,Mgの渓流流出水濃度は, 流出水量のおおきい夏期にやや低下する傾向があった. 逆にPは流出水量のすくない冬期にやや濃度が低くなった. 流出水のpH,硅酸,NH_4-N,org-N,Naの流出水には季節変化は認められなかった. 3.洪水時の水質変化: 渓流流出水のNO_3-N濃度は水位の上昇に伴って上昇し, 最高水位で最大となり, 以後急速に減少して旧に復する傾向をしめした. Na,Mg,SO_4は, 水位の上昇とともに濃度は低下し, 水位の下降とともに旧に復した. Clは洪水時期によってことなった変動をしめし, CaとKは洪水時期よりも集水域によって濃度変動が異なった.
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