研究概要 |
近畿地方の水需要を賄う琵琶湖は, またその湖面々積の約5倍の集水域からの流入水量によって涵養されている. 集水域の存在する水源山地は湖南部の瀬戸内海性気候と湖北部の日本海性気候に大きく区分される. 春先の琵琶湖貯水量は, 主として冬季の降雪による湖西・湖北部山岳地からの融雪流入水量によって維持される. 融雪流入水量が何時, 何拠から, どれくらいあるかという精度良い情報を得ることは水管理上大変重要である. 現在ほとんどの水源山地は森林で覆われているが, 今後は開発によってその状態が変化することも想定しておかなければならない. すなわち森林の存在が積雪・融雪・流出の諸過程にいかなる影響を及ぼしているかという点についても定量化が望まれる. 一方, 降雪・融雪・流出の過程をモデル化する時, 琵琶湖集水域は積雪と融雪が同時進行するいわゆる暖候性積雪地域であることに留意しなければならない. 寒冷地などで作成されたモデルをそのまま適用すると大きな誤差が生ずる可能性がある. 従って, まず手をつけねばならないのは基礎資料の集積である. 当研究者らは従来から琵琶湖を取巻く幾つかの山岳地域で水文観測を続けている. まず, 降雪の影響の少ない湖南部で1箇所, 同じく湖南部ではあるが標高が高く, 積雪・融雪を無視できない地域で1箇所である. また, 湖西部で毎年1〜2mの積雪の生ずる地域で1箇所, 湖北の豪雪地域で1箇所である. それぞれの地域の観測流域では気象・積雪量・積雪深等の記録が整理されてきた. 特に, 本研究期間においては各箇所の気象観測と湖西部流域の融雪流出解析を重点的に行なった. 結果は「暖候性の古生尽山地流域における降雨・降雪と流出(I,II)」として取りまとめられた. 残された問題もあるが, まずは簡単な方法で積雪から融雪流出までの全過程を追跡できることが判明した.
|