研究概要 |
約60種の針葉樹及び広葉樹のXPP(本部圧ポテンシャル)を測定し, さし木発根との関係を追求した. XPPは圧室法によって1年目にはさし木親木を正午頃, 2年目には同じさし木からの採穂によって, 日の出前に, いずれも年5〜7回測定した. さし木はミストかん水装置のある野外のさし木床に春と初夏にさしつけ, 秋に掘り取り, XPPとさし木発根率の関係を調べ次の結果を得た. 1.さし木親木のXPPと発根率の関係. 1年のうちでは8月のXPPが最も低い. XPPと発根の関係は6〜8月で相関が高い. 発根率を良し, 普通, 不良に分け, 春ざし, 夏ざしを針葉樹, 広葉樹及び常緑樹, 落葉樹別に分け, さしつけ時の3月, 6月, 8月, 11月及び年平均ポテンシャルとの関係をみるといずれも発根のよい樹種はポテンシャルが高く, 発根不良樹種でポテンシャルが低いことがわかった. 常緑樹は落葉樹に比べXPPの年変化が少なく, 着葉の有無がXPPに強く影響している. 同じ科内樹種のXPPの月別変化は着葉形態が同じ場合にはかなり類似した. 2.さし木のXPPと発根率の関係. さし木のXPPはさしつけ後徐々に, 1カ月あたりから回復した型と回復せずそのまま低下した型がみられた. 前者は発根率がみられ, 後者はほとんど枯死した. XPPと発根率の相関はさしつけ後1カ月以降徐々に高くなった. 常緑針葉樹ではさしつけ時から高い相関がみられた. 枝葉の含水率とXPPの関係は多くの樹種で平行関係がみられた. 土壌の乾燥につれてXPPは低下した. 上述の結果は約60種に及ぶ多数の材料を用いたものであるが, XPPは測定時期によっても, また, 1日のうちの時間によって変るので今後は同種についてより多くの材料を用いての実験が望まれる. また, 同一さし木から5〜7回も小枝や葉の採取は光合成器官を減少させ, 発根に少なからず影響を及ぼすことが考えられるので, XPPの測定方法の改良, 開発が今後の課題であろう.
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