研究概要 |
我が國の代表的離島である長崎県の対馬を研究対象として, 長伐期・短伐期併用による林地の有効利用法について検討した. まず, 対馬における森林・林業の現況を分析し, その結果から, 林地の有効利用を考えるにあたっては, スギ・ヒノキ人工林の長伐期施業, コナラ・アベマキ・ノグルミを主体とする椎茸原木林の短伐期施業を基調としなければならないことを明らかにした. 次に, 広葉樹林の林分構造を解析し, 椎茸原木林育成の立場からみた問題点を指摘するとともに, スギ・ヒノキ人工林, 広葉樹林, モミ, カヤ林などの生長と立地因子の関係を究明し, その結果から, スギ・ヒノキ人工林の長伐期施業, 椎茸原木林の短伐期施業が中心となるが, 製炭原木林施業, 特殊用材林施業も, 部分的には適用しなければならないことを指摘し, それぞれの今後の施業法について考察した. さらに, 現地調査, 空中写真, 地形図, 林相図を併用して, 林地利用の良い例, 悪い例を具体的に示した. 最後に, 以上の結果を総括して, 対馬における林地の有効利用にあたって留意すべき点として, 次の事項を指摘した. 1.林地の有効利用にあたっては, 経済性ばかりでなく公益性も考慮しなければならない. 2.スギ・ヒノキの植栽にあたっては, 立地因子との関係を, 特に重視することが必要である. 3.コナラ・アベマキ・ノグルミなどの椎茸原木林ばかりでなく, 広葉樹林全体についての育林技術を確立する. 4.以上のことを前提として, 先に示した良い例をモデルとして, 林地の利用計画を樹立する.
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