研究概要 |
シャリンバイ癌腫病菌の生理・生化学的性質及び宿主特異性, 病原性等の生態を調査し, その分類学的所属を決定した. 以下, 結果の摘要を記した. 1.本菌は, 蛍光色素産生群Pseudomonas属植物病原細菌の類別によると, LELLIOTTらのIb群に属する. しかし, sucroseの利用性が陰性であり, P.viridiflavaに類似するが, 本菌は馬鈴薯軟腐試験, ゼラチン液化, エスクリンの加水分解等は陰性であり, 明らかに異なる. 一方, sucroseの利用性が陰性と報告された, 病原型pv.vibruniも存在する. よって本菌は, P.syringaeに所属させるべきである. 2.P.syringaeに所属する各病原型のうち, 木本に癌腫を形成するものとして, PV.savastanoi, pV.eriobotryae及びpv.myricaeの報告がみられる. これら3菌種と本菌との細菌学的性質を比較したところ, 僅かに数種で差違が認められた. この中, 硫化水素, オキシダーゼの活性, インドールの産生等は, 各病原型間あるいは, 菌株間によって差違があることまた, P.syringaeの各病原型について, 栄養学的, 生化学的調査を実施したが, 相互に75%以上の性質で一致しているとの報告もある. 以上の結果は, 本菌が他の病原型といくつかの性質で区別されるものの, 別種とすべきほどの違いではないことを示している. 3.本菌は, 44科105種の木本に接種したが, シャリンバイ以外に病原性を示す植物はなかった. すなはち, 本菌は, 宿主範囲においても既知のP.syringaeの各病原型とは明瞭に区別され, 宿主特異性が認められた. 4.以上の細菌学的性質及び寄生性から, 本菌は, Pseudomonas syringaeの新しいpathovarと考えられた. よって本菌をPseudomonas syringae pv.rhaphiolepidis pv.nov.と命名し, 病名をシャリンバイこぶ病〔Bacterial gall disease of Sharinbai(Rhaphiolepis umbellata Mskino)〕と呼称し, 本菌のタイプ培養として, RU2を指定する. 本菌株は近々, 国際的菌株保存機関であるATCC(U.S.A), NCPPB(England), 及びPDDCC(New Zealand)に, また, 国立遺伝学研究所に寄託したい.
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