研究概要 |
1.木材自体が発する螢光からリブニンの配向分布を求める方法について検討した. 螢光偏光成分強度比の試料厚さ依存性は, 各螢光偏光成分強度比および樹種によって異なった. 試料媒体の影響を除去した真の螢光偏光成分強度比を, 試料厚さと螢光偏光成分強度比との関係を試料厚さゼロに外そうすることによって求めた. この螢光偏光成分強度比から分子配向度を求めた結果, いずれの樹種ともリグニンが繊維方向にわずかに選択的に配向していることが認められた. その分子配向度はカナリウムが最も高い値を示し, スギが最も低い値を示した. 2.高度にアセチル化した木材に螢光性分子を導入し, 螢光性分子の配向分布を測定した場合, リグニン自体が発する螢光の配向分布と似た分布を示すことが認められたので, その原因について検討した. 螢光性分子を導入して求めた未補正の分子配向度は, 高度なアセチル化処理によって本邦産広葉樹材の場合殆ど変化しなかったが, 針葉樹材およびラワンの場合著しく低下した. この顕著な分子配向度の低下は, アセチル化処理によるリグニン自体が発する螢光強度の増加に起因することがわかった. アセチル化処理に伴って螢光性分子の導入が抑制されるが, 螢光性分子が染着される構成成分が変化するか否か明らかでない. 3.木材細胞壁の螢光強度分布を螢光顕微鏡によって観察した. 木材自体が発する螢光は複合細胞間層や二次壁外層付近で強く, 細胞壁中に螢光性分子を導入すると, 細胞間層での螢光強度は殆ど増加せず, 他層に比べて螢光性分子が入りにくいことが認められた. アセチル化処理によってこの傾向は殆ど変らなかった. 4.水分と熱による木材の軟化と構造との関係を検討した結果, 比ヤング率に対する非晶領域の分子配向の影響が大きく, また水分と熱で軟化したとき, 結晶化度とリグニン量が小さい材ほど, 小さい比ヤング率と大きい破壊ひずみをもつことが認められた.
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