研究概要 |
X線CTスキャナは, 物体の内部切断を非破壊で観察できる利点があり, 医療診断の分野で活躍している. 医療用の同装置を用いて, 木材内部の水分分布を非破壊測定する際の, 測定精度の検定, 精定精度向上のための処置について検討した. X線特有の線質硬化(カッピング効果)に対しては, 水のX線減弱係数に近い, グラニュー糖, シリコンゴムを介して被検体にX線を照射するよう処置することにより, 被検体同縁部の含水率測定精度向上が認められた. また, この補償物質は円型である方が良いことを明らかにした. でき得る限りの精度向上処置を行うことにより, 含水率40%以下の範囲では1%程度の誤差におさえることができる. 以上の方法により, ダグラスファー6em厚正柾目板の乾燥経過を追って一定断面の断層像から, 厚さ方向の含水率分布を求めた. 含水率分布は熱気乾燥と高周波減圧乾燥とで異なり, 適正な乾燥条件を与えることにより, 高周波減圧乾燥では含水率傾斜の小さな, 即ち, 損傷の危険が少ない状況で乾燥可能である. 熱気乾燥の際の材温分布が均一な状態での水分移動をFick拡散則によって検討した. 含水率分布の経時変化から差分近似式を用いて, 拡散係数を直接計算できる点に, 本研究の特徴がある. 実測不能な表面含水率を, 拡散係数の連続性から修正し含水率分布や乾燥経過をシミュレーションし, 実測値と比較しながら決定した. 表面含水率は, 高含水率範囲で約6%, 低含水率範囲で3〜4%平衡含水率より高く設定すべきことが明らかとなった. 水分移動の駆動力は, 含水率, 水蒸気圧あるいは化学ポテンシャルのいずれでも本質的な差はない. 拡散係数が含水率変化に伴ってほぼ一定, 繊維飽和点以上の範囲にも適用可能などの点で, 駆動力は含水率と考えた方が良い. 温度変化に対応できない弱点は, 含水率による水分移動と温度差による熱拡散を組み合わせることによって解決可能である.
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