研究概要 |
バロニア(緑藻の一つ)セルロース【I】で見い出した格子像(電子顕微鏡で得られる結晶格子の像)撮影のための最適条件をバロニアセルロース【】III【_(】I【)】に応用し、セルロース【】III【_(】I【)】結晶からその(1【1!~】0),(110)&(200)の赤道線面および(002)の子午線面の格子像(各々面間隔は、順に0.74nm,0.43nm,0.52nm)を得た。得られた格子像をもとに、セルロース【】III【_(】I【)】結晶の横断面構造ならびに縦断面構造の特徴づけを行うとともに、セルロース【I】結晶の構造と比較することで、セルロース【I】→【】III【_(】I【)】の反応過程で生ずる結晶形態レベルでの変化を考察した。セルロース【】III【_(】I【)】の断面構造は(1【1!~】0)と(110)&(200)(面間隔が同じなので格子像からはどちらであるか判断できない)の格子像から推定した。格子縞の本数をかぞえ、その頻度分布を求めたところ、(1【1!~】0)面が約18、(110)&(200)面が約38の最頻値を得た。これより、セルロース【】III【_(】I【)】の結晶断面の大きさについて(0.74nm×18)×(0.43nm×38):13nm×16nmという値を得た。また、単位格子のなす角(γ≒122゜)を考慮すると平行四辺形に近い形状であると予想された。一方、繊維方向(C軸方向)の周期構造、例えば長周期構造の存在の有無は(002)子午線面の格子縞の連続性により判断した。格子縞は繊維方向に少なくとも100本以上(50nm以上)とぎれることなく認められたことから、それ以下の長さの周期構造の存在は否定された。セルロース【I】と【】III【_(】I【)】を比較すると、繊維方向には結晶形態レベルでは差は認められないが、横断面形状については、後者が前者の約半分となる。詳しく言えば(110)面の格子縞の本数が約半分になることがわかった。これより、セルロース【I】→【】III【_(】I【)】の過程では、結晶形が【I】から【】III【_(】I【)】へ変態するのみではなく、結晶が(110)面に生じた裂け目により細繊化(sub-fibrillation)されることが示唆された。
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