研究概要 |
マツノマダラカミキリの産卵反応は産卵基質に18〜21%以上の水分を含む時のみ, 寄生植物樹皮中に存在する不揮発性の産卵刺激物質によって誘導される. 寄生植物からの揮発性物質(誘引物質も含む)はカミキリの産卵行動に直接関与しない. 寄生植物の形成層や材部もカミキリの産卵行動に関与しないと推定された. 産卵管を挿入する前段階に見られる一点反復咬みつき行動は, 外樹皮の含水率や寄生植物からの揮発性物質に依存せず, 外樹皮中の不揮発性物質によって誘導される. 外樹皮のこの物質の作用で, カミキリは外樹皮の一点を反復して咬み続け, 内樹皮に達っした時点で含水率が18〜21%以上の時のみ, 内樹皮中の活性物質に感応して産卵管を挿入するものと推定された. 産卵管挿入行動には内樹皮中の産卵そのものの行動を支配する物質の他に, もっと多様な揮発性物質が関与しているものと推定された. 産卵刺激物質は, 熱水, 温水, 一部冷水, 70%アセトン, メタノール, ジメキルホルルアミドに可溶な極性物質である. 生物検定と分析効果から, 産卵刺激物質は寄生植物内樹皮中の, 分子量1000以下の低分子フェノール性抽抽成分並びに硫酸・アンスロン処理で583〜588nmに吸収極大を与える糖物質である可能性が高く, これらが18〜21%の水分の共存下で相動的にカミキリに作用しているものと推定された.
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