研究概要 |
北海道産広葉樹林材20樹種とカラマツ材の電気伝導率を, 木材構成要素と細胞壁の量および形態に関係する因子と関連づけて考察した. その結果, 1)樹種による電気伝導率の相違に, 構成要素率の影響を認めず, 2)含水率一定のとき, 電気伝導率と細胞壁量との間に相関関係がない. また, 3)細胞壁の電気伝導率について, 樹種間にバラツキを認め, 4)カラマツ樹幹内の部位による電気伝導率のバラツキには, 細胞壁率とミクロフィブリル傾角が寄与する. 他方, 5)電気伝導率への単位体積当りの含有水分量の関与は, 樹種の相違とほぼ無関係で, 細胞壁量との間に高い相関関係を認めた. したがって, 細胞壁の質的構成を考慮する必要性を一部には認めるものの, 電気伝導率は, 含水率だけでなく細胞壁量をも的確に示すことを明らかにした. 広葉樹林の透過に関係する組織・構造を空気透過率を使って評価することを試み, 広葉樹林では道管が, 針葉樹材では仮道管が主要な空気透過経路であるとしても, 1)粗大空隙率, 管孔体積, 管孔径と分布などと空気透過率との間に相関関係がなく, 2)カラマツ材の空気透過率は樹幹内部位による大きなバラツキを認めた. 一方, 簡単な2要素モデルを透過経路に適用すれば, 1)管孔径分布, せん孔の構造, チロースなどによる道管閉そくなど, 透過経路にかかわる組織・構造を類型化し, 2)道管の閉そくがなければ, 道管の径や数が, 透過性を使って十分に評価でき, さらに, 3)空気透過率から道管と仮道管壁孔の閉そく率を求めることの可能性を示唆した. すなわち, 空気透過率は透過経路の樹種による構造的相違を敏感に反映しており, 組織・構造の総合的な評価指標として位置づけられることを明かにした. 及水と乾燥の速さを, 上記物理的指標と組織・構造とに関係づけた結果, 三次元的物質移動の仕組みとその経路を構成する構造との相互関係を総合的に考察する必要性を認めた.
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