研究概要 |
本研究は, 低分子量樹脂の木材実質への浸透が良好である点に着目して, 分子量分布の広いフェノール樹脂を用いて, その内の分子量の小さい樹脂を小片への含浸に, 高分子量のものを小片間の接着に供することにより, 従来のパーティクルボードの欠点である吸湿・吸水によるボードの厚さ方向の寸法変化を改善し, さらに小片を一定方向に配向させることにより強度的にも満足しえる構造用パーティクルボードの製造法を確立しようとしたものである. 供試樹脂の分子量分布についてGPCにより検討した結果, 含浸用樹脂の数平均分子量は389, 接着用のそれは962であった. 浸せき法による小片への樹脂の含浸について検討した結果, 樹脂液濃度と小片中の樹脂含浸率の間に直線関係があり, 樹脂液濃度と浸せき時間を調節することにより, 含浸率の規制が可能である. 樹脂含浸ボードの曲げ性能は, ボード比重に依存して直線的に増加するが, 含浸率にはあまり影響されない. 湿潤曲げ性能の残存率は大きく改善され, 含浸率10%で90%である. 配向性ボードの曲げ性能は, ランダムボードの約2倍となる. 配向性およびランダムボードともに, 含浸率の増加で厚さ膨張率が大きく低下し, 含浸率10%でコントロールボードの約1/2となり, 小片へのフェノール樹脂含浸による寸法安定性の改善効果が大きい. 吸湿による板面での寸法変化率は, 配向性ボード平行方向で0.15〜0.25%, 含水率1%あたりの板面の寸法変化率は0.025%以下である. ASTMの促進劣化試験での厚さ膨張率は, 含浸率10%でコントロールボードの約1/2であり, フェノール樹脂含浸処理が耐久性に大きな効果を示す. 浸せき法と噴霧法の結果にはあまり大きな差異はないが, 低分子量と高分子量の樹脂を混合した後噴霧する方法(一般噴霧法)が最も実用的であり, ボードの強度的性質, 耐水性, 耐久性の面で効果的であると結論される.
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