研究概要 |
本研究の特色は、シオミズツボワムシ(以下ワムシ)大量培養槽内に共存する細菌や原生動物等の微小生物を槽内環境の演出者としてとらえ、その動態とワムシ増殖の関係を知ることによって、槽内生態系の成り立ちを明らかにする事に有った。研究には、30トン屋外水槽4面における間引き式培養および0.6トン室内水槽6面における植継ぎ培養を対象とし、前者については1日1回、約1ケ月間の観測を、後者については3時間々隔で48時間の連続観測を行ない、いずれの場合も、水質,細菌相,原生動物相,ワムシの増殖および活性等について、分析,性状試験,同定,計数,記録を行なった。 湿式分解によって測定した全窒素量(N量)についてみると、間引き式培養の場合、ワムシ飼育水中の懸濁態N量はきわめて少く、水中全体の約30%に過ぎなかった。さらに、1日の給餌量がワムシの排泄量に遠く及ばないにもかかわらず、ワムシが増殖する事を考え併せると、富栄養化したワムシ飼育水中で繁殖した細菌および原生動物類が、フロック化したのちワムシに大量に摂餌されているものと考えられた。すなわち、間引き式培養では、それら微小生物の存在によって、ワムシ増殖に必要なエネルギーの供給が保証されていることになる。 大量の餌料を投入する植継ぎ式培養の場合には、槽内環境の変化が劇的であり、とくに細菌相の交代とワムシ増殖率の間には明瞭な相関が認められた。このことについて、飼育水より分離した細菌24株それぞれを、無菌培養ワムシの飼育水中に混入したところ、明らかな増殖促進効果を持つもの,ワムシを死亡せしめるものなどに分かれ、細菌は直接的にもワムシの生理活性に関わっていることが明らかになった。
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