研究概要 |
コイの血清から補体第1成分(C1)を各種クロマトグラフィーを組合わせることによって単離した. その際, カラゲナン処理コイ血清(C1を欠く)をC1検出用試薬として用いた. コイ血清300mlから最終的に役2.8mgのコイC1が得られた. C1の溶血活性の最終回収率は18%, タンパク質量の回収率は0.023%で精製度は78.8倍であった. 得られた精製C1はセファロースCL-6Bゲルクロマトグラフィーにおいて単一ピークを示し, また抗コイ全血清抗体(ウサギ)に対する免疫電気泳動において1本の沈降線を与えた. コイのC1の分子量は約102万で, その溶血活性はEDTA添加によって阻害されたが, Ca^<2+>を含む緩衝液に対して透析することによって回復した. このことは, コイのC1が哺乳類のC1と同様, その活性化にCa^<2+>を必要とする複合タンパク質であることを示唆している. さらに, コイのC1は加熱処理(50°C, 15分)ないしカラゲナン処理によって容易に失活したが, アンモニア処理, ヒドラジン処理およびザイモサン処理によってはほとんど影響を受けなかった. これらの実験結果は, ヒトやモルモットのC1について得られた結果とよく一致しており, コイのC1が分子構造においても哺乳類のC1と類似していることを示している. 次に, 各種クロマトグラフィーを組合わせてコイの補体第2成分の単離を試みたが, コイ血清中のC2含量が予想以上に少なく, かつC2が極めて不安定であったため成功しなかった. しかし, 感作ヒツジ赤血球(EA)にCa2+のみの存在下でコイ血清を作用させて得られる溶血中間複合体EAC1, 4(Yanoetal, 1986)に, さらにヒドラジン処理コイ血清(C3を欠く)を作用させるとEAC1, 4, 2が得られること, およびEAC1, 4, 2とC3との反応には2価イオンは必要でないことなどを実験的に証明することができた. 現在, より多量のコイ血清(2〜3l)を用いてC2の単離を試みているが, 将来はさらにC3およびC5の単離にも取り組みたい.
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