研究概要 |
目的:年齢別年別漁穫尾数【C_(ij)】のデータ行列より年齢別選択性Si、年による漁穫の強さfj、加入資源尾数【N_(1k)】を同時推定するマルチコホート解析では多くの留意点が指摘されている。社会科学で用いられているベイズ型コホートモデルを水産学に導入し、適応用の方法と限界について検討する。漁穫方程式の修正と推定手順:(1)一般の漁穫方程式では適用は困難で、修正近似式【C_(ij)】=【S_i】・fj【(1-E)^(i-1)】【N_(1k)】【e^(-(i-1)M)】を採用する。(2)ln【C_(ij)】-【(i-1)_(ln)】(1-E)+(i-1)M=lnSi+lnfj+ln【N_(1k)】が基本モデルで、右辺が年齢・時代・コホート効果、【】μ^A【_i】,【】μ^P【_j】,【】μ^C【_k】に対応する。(3)パラメタの一次階差の重み二乗和が小さくなる条件を付加すると、ベイズの定理に従い、ABIC=-2ln∫f(x|【σ^(-2)】)・π(【μ_*】|【】σ^2【_A】,【】σ^2【_P】,【】σ^2【_C】,【σ^2】)d【μ_*】の最小化により、超パラメタ【】σ^2【_A】,【】σ^2【_P】,【】σ^2【_C】は決定される。さらに最適モデルの選択、即ち3効果のパラメタの推定が可能となる。仮説データによるモデルの検討:【S_1】【f_1】Nの1×4×7=28組の仮説データを入力し、説定した効果の再現性を検討した。Cの最高値を示す年齢からコホートごとのlnC=a-ZiよりE=1-【e^(-(Z-M))】を計算した。漁穫率では、O(EO)、1/2(E1/2),1(E1)の3組、付加条件では年齢効果の超パラメタを全年齢共通にする方法(A)、若齢部の重みを小さくする方法(B)の2組を比較した。(1)fが急増する設定では3効果の再現性は悪い。(2)ABICの大小を基準とすると、B法ではA法に比べ改善されたモデルが選択された。(3)パラメタの視覚的再現性では、Eの差は明瞭でないが、B法はA法よりまさる。適用と課題:九州西海域マサバ資源の1966〜1985年,0〜6歳の資料を用い、Mは0.35とした。B法のE1において最適モデルが選択され、知見とよく一致した。(1)漁穫方程式を直接適用したモデルの開発、(2)誤差導入のシミュレーションの実施、(3)効果と相対値から絶対値への変換などが課題である。
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