研究概要 |
本研究は, 海産甲殻類に一種カメノテ(Metella mitella)に含まれるベタイン類を精査するとともに, それらの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分離法を検討し, 併せて検出された未知ドラゲンドルフ陽性物質の化学構造を調べたもので, 主な成果は以下のとおりである. 1.カメノテから調製した80%メタノールエキスをDowex50のカラムに添加, 段階的に塩酸濃度を上げて溶出し, 溶出液中のドラゲンドルフ陽性物質を藻層クロマトグラフィー(TLC)で調べたところ, 10種以上の成分が検出された. 2.グリシンベタイン(I), β-アラニンベタイン(II), γ-グチロベタイン(III), ホマリン(IV)およびトリゴネリン(V)の5種のベタインをMagnum9-SCXあるいはカスタム2616カラムを用いるHPLCにより分離する方法を設定した. 3.上記の方法でカメノテの主なドラゲンドルフ陽性物質を分離し, 標品との各種スペクトル, HPLCの保持時間, TLCにおけるRf値の比較により, I〜Vを固定した. 4.1の実験でIN塩酸溶出画分中に多量認められた未知のドラゲンドルフ陽性物質を単離し, 各種スペクトル分析により化学構造を調べたところ, 1953年, Ackermannらによりイソギンチャクの一種(Anemonia sulcata)に認められた200anemonin(VI)と同定された. 節足動物にVIの存在を示したのは, これが最初である. 5.カメノテの近緑種のクロフジツボ(Tetraclita squamosa japonica), ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)およびヨロイイソギンチャク(Anthopleura japonica)にもVIの存在を認めた.
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