研究概要 |
申請者は, すでにマボヤ筋膜体から新ベタイン, ハロシニンを単離し, その化学構造を決定した. 本研究はハロシニンの定量法を定めた後, マボヤの筋膜体および諸組織における含量ならびに近縁動物の分布を調べ, 次いでハロシニンの生合成経路を明らかにしようとするもので, 成果の概要は次のとおりである. 1.合成ハロシニンをP-ジブロモフェナシルエステル(I)化し, HPLCによる定量法を検討した. 分離用カラムにChim-packKFLC-CNを用い, 5%CH3CN含有5mMKH_2PO_4(pH2.0)で溶出し, 262nmで検出した. ハロシニンのIはマボオ筋膜体に多量に含まれるグリシンベタインのIとは完全に分離し, 他の紫外部吸収物質の影響も受けなかった. また, 検量線は0-300nmolの範囲でほぼ直線となった. 以上の結果から, 本法をハロシニンの完量に適用可能と判断した. 2.1の方法を用いて, マボヤ筋膜体のハロシニンを季節別に調べたところ, 周年筋膜体100g中50mg以上検出され, 冬期に高く, 夏期に減少するという季節変動を示した. また, ハロシニンはマボヤの肝臓およびえらに少量検出されたが, 生殖腺および被嚢には認められなかった. 種類別分布では, マボヤと同じホヤ類のシロボヤ(筋膜体, 肝臓, 生殖腺およびえら), イタヤボヤ, アンチンボヤおよびユウレイボヤ(以上全体)に30mgから痕跡検出された. 3.マボヤ筋膜体に14C-Lysを注射し, 経時的に筋膜体を採取し, エキスを調整, イオン交換樹脂を用いてハロシニンを単離した. ハロシニン画分の放射能を液体シンチレーションカウンターで調べたところ, 飼育後10日の試料に放射能が検出された. さらに種々の条件でTLCに付し, ハロシニンのスポットに放射能が存在することを確かめた. 以上の結果から, マボヤ筋膜体のハロシニンはLysから生合成されることが明らかとなった.
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