研究概要 |
1.体全体をくねらせて泳ぐウナギやイシガレイでは体全体一様に筋肉のコラーゲン含量は高く, 体の後半部や尾の振りで推進するマサバやクロマグロでは筋肉のコラーゲン含量は尾部後半部では高いがその他の部位では極端に低かった. マダイではこれら2グループの中間的なコラーゲンの分布パターンを示した. 筋肉のコラーゲンの分布パターンは魚の遊泳様式と密接に関連しており, 屈曲の大きい部位程コラーゲン含量は高く, それらが筋肉の構造維持や力の伝達に機能していることがわかった. 2.生肉(刺身)の硬さと筋肉のコラーゲン含量との関係について調べた結果, コラーゲン含量の多い筋肉程その肉質は硬い傾向があり, 生肉のテクスチュアーにコラーゲンが強く係っていることがわかった. 3.筋肉からコラーゲンを単離するとき, 筋肉の主要成分である収縮タンパク質など非コラーゲンタンパク質を除去することが困難である. 種々検討の結果, 0.1NNaOHで前処理して非コラーゲン物質を除去し, 未変性でかつ純粋なコラーゲン標品を調製する方法を確立した. 4.各種魚類の筋肉から得た酸可溶性コラーゲン中のヒドロキシプロリン含量を求めた結果, 種によりその含量は大きく変動した. また高い水温に棲む魚程ヒドロキシプロリン含量は高い傾向が認められた. 5.コイ筋肉からペプシン可溶化コラーゲンを調製し, 塩分画法によりコラーゲン分子種の分画を試みた. その結果, 2種類の性質の異なるコラーゲンを得た. アミノ酸分析, 電気泳動像, NaClに対する沈澱性などの結果から, それらはI型およびV型コラーゲンであることを証明した. 各種魚類について筋肉におけるこれらコラーゲンの分子種の分布パターンを調べることにより, 筋肉におけるコラーゲンの生物学的役割を明らかにすることができると共に食品学的な観点から肉質におけるその寄与を解明することができると考える.
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