本調査研究は、兼業農家の世代交替にともなって、その後継者がいかに自家農業を継続させているかを明らかにするものであった。当初の計画においては、近畿兵庫県姫路市周辺地帯を中心に調査を行う予定であったが、他地域との比較も必用であると考え、調査対象地域を拡大し、兵庫県飾磨郡夢崎町の3集落、愛知県刈谷市の2集落、福島県原町市の2集落、宮城県南方町の2集落を対象地域として設定した。調査方法は主にアンケート方式(各集落悉皆調査)とし、とくに兼業農家の年令25〜44才までの後継者の就業状況や意向お中心に調査項目を設け、これを実施した。回収されたアンケートは、夢崎町78、刈谷市89、原町市85、南方町87、合計339であった。 現在、なお一部に未集計を残しているが、アンケート結果以外の聞き取り調査も含めて、明らかになった要点を記せば、以下のごとくであった。(1)地域によって農業構造、兼業条件などかなりの違いがあるが、兼業農家の後継者も年齢が30代になれば-世代交替するかしないかの-、大半は何らかの形で自家農業に従事する行動をどこでもみせている。(2)彼らの大半は恒常的勤務形態をとって農外就業しているが、今後「農業を止める」とするのは少なく、「兼業しながら農業も続ける」がかなり圧倒的に多くなっている。(3)彼らの少なくない部分が、自家農業継続にあたっての「悩み」をもち、何らかの「組識」的対応が「あった方がよい」と答えているのが、現実に彼らが何らかの農業関係の組識に参加している事例はきわめてまれでしかない。(4)しかし、福島県原町市○集落のように、兼業農家の後継者が主体となって「農事研究会」を組織している事例も生まれてきている。(5)他方、各市町村の行政、農協等の各機関の「農業後継者対策」は、以前として「専業的後継者」のみに目を向けたものとなっている。農業後継者対策は「兼業農家後継者」対策も視野に入れたものとすべきだろう。
|