研究概要 |
(1)1980年代前半の我が国農業における経営組織は, 販売金額700万円, 経営耕地3haを分岐点として, 中下層における単一化の進展(小農型複合経営の減少), 上層における複合化の進展(大農型複合経営の増加)として要約できる. 下層では稲作単一経営が増える(60%以上)とともに, 上層では稲作, 施設園芸, 野菜, 果樹などを主とする複合経営が増えている. 中下層における単一化の進展は, それまで家族協業に支えられてきた複合経営のマイナー部門の縮小によるものであり, 上層における複合化の進展は, 水田利用再編対策, 施設園芸, 果樹, 野菜等, 商品作物の新たな拡大, 畜産等における生産過剰や価格変動による専門経営の淘汰等を要因としている. このうち稲作大規模経営では, 販売収益最大化を前提に, 麦, 野菜を組み合わせた土地・機械利用共同, 果樹・工芸作物を組み合わせた労働力利用共同, 酪農・肉用牛を組み合わせた中間生産物利用共同など3タイプの複合経営が増加している. なお, これら大規模複合経営の新たな展開が借地, 雇用, 作業受託あるいは生産組織への参加等によって支えられている点が重要である. (2)雇用農家戸数は減少傾向をたどっていたが, 1980年代には, それが増加に転じた. 新しいタイプの雇用農業は旧来のタイプとは性格を異にしている. 5ha以上層の雇用農家比率は半分弱に達している. 「例外規定農家」の雇用規模は全階層中最大である. 経営組織別にみると, 穀作・畜産は男子型雇用であり, 野菜類・施設園芸・果樹などは女子型雇用に分類しうる.
|