研究概要 |
現在, 青果物需給は多様化・少量買いを反映し全般的に需給緩和基調にあり, 産地の出荷体制も不安定な状況にある. そこで本報告では合理的な市場間出荷調整を図って価格安定を実現するため, 事前に適切な情報を得る短期的な市場出荷調整モデルの作成を試みたものである. 元来卸売市場価格の変動は日次単位を基本に生じており, 出荷調整も日次単位で要請される. しかしながら一般的な公表データが月次単位であることから, 日次単位まで遡った解析はほとんど試みられていなかった. 本報告では, 生鮮食品流通情報システム(農林水産省)の日別データを利用して, 卸売市場間の相互関連性, 気象条件の市場価格への影響等を明らかにし, さらに日次時系解析を試み, 超短期の週間変動及び周期を1年以下とする短期循環変動等を抽出した. その結果, 各卸売市場では卸売価格を媒介に相互に強い影響を及ぼし合っていること, とくに地方卸売市場の場合は前日の大都市中央卸売市場の影響を強く受けていることが判明した. また気象条件は, 入荷量及び需要量など需給の両面から複雑に作用し, 価格形成上重要な要因になっていること. さらに超短期の週間変動については, 入荷量は週明け週末に荷動きが活発で, 週中にやや鈍くなる傾向が見られたこと. また日次単位の時系列解析によっては, 主要野菜はおよそ120日前後を周期に短期循環変動をしていること等が明らかとなり. それらの分析結果は次のように計量モデルとしてまとめた. 地方卸売市場価格=f(産地別・規格別当該市場入荷量, 前日の大都市中央卸売市場価格, 前日日照量, 季節トレンド, 週間曜日ダミー, 天気概況ダミー, その他行事ダミー) しかしこうした日次単位データの計量モデルへの利用は緒についたばかりであり, 今後への改良が望まれる.
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