研究概要 |
1研究の経過 昭和61年度,62年度,63年度に亘って沖縄県宮古・八重山,沖縄本島,奄美諸島において、農地の相続慣行と所有構造に関する調査を行った。調査した集落は17,調査農家数は258戸である。 2研究の結果 (1)南西諸島における農地の相続は、分割を伴いつつなされている。しかし、分割は男子のみを対象としており、また男子のなかでも長子が優先されている。すなわち、男子分割・長子優先の分割である。 (2)農地相続がこのような形態をとるのは、分家する二・三男の生活を支えようとする「生活の原理」と、先祖の位牌を継承する長男により多くの土地を分けようとする「祭祀の原理」という二重の原理が対抗的に作用してことによると考えられる。 (3)分割の割合は、屋取集落〈本(百姓)集落〈宮古・八重山〈奄美の順に高くなっている。本集落,宮古・八重山、奄美の間にはそれほど大きな差はみられないが、この3地域と屋取集落の間には大きな開きがある。 (4)屋取集落と他の3地域の違いは、屋取集落には地割制がなく、他の3地域には地割制もしくはそれに近い土地利用の慣行があったという点にある。このことから分割相続は、地割制における土地配分の観念が引き継がれたものとして理解することができる。 (5)農地の分割相続の結果、土地所有の構造は極めて零細かつ分散的である。しかし利用の面では、売買や貸借といった移動を通してかなり柔軟な動きがみられる。 (6)今後、利用の面での柔軟性をさらに拡大していくことを視点に据えた研究が必要であると考える。
|