研究概要 |
火山灰土の物理・工学的な特異性は, その主要な粘土鉱物であるアロフェンの性質と, それによって形成される特殊な骨格構造に起因すると考えられる. 火山灰土のこれらの性質は, 最近の関連分野の研究によってかなり明らかにされてきたが, それを物理・工学的な観点から捉え直すことにより明らかにできると考えられる問題が多くある. ここではその中で, (1)風乾によるアロフェンの粘度, 濁度, 及び微細構造の変化, と(2)アロフェン懸濁液の分散特性に及ぼす遊離酸化物の影響, を中心に, アロフェンの微細構造と力学的挙動との関係について研究を進めた. これにより明らかになった点は次の通りである. 1.風乾によるアロフェンの粘度, 濁度, 及び微細構造の変化について (1)中性〜アルカリ性側では, 風乾によるアロフェン表面の物理化学的性質のわずかな変化が, アロフェン分散系の性質に大きく影響を与える. (2)しかし, 自然の火山灰土のPH条件, すなわち弱酸性(PH6付近)では, 生土と風乾土の違いがかなり小さく, 風乾による火山灰土の物理・工学性の変化の原因は, アロフェンの粗粒化によるものと判断される. (3)以上のことを電子顕微鏡観察で確認し, 特に鹿沼土アロフェンが風乾によって粗粒化することを確かめた. 2.アロフェンの分散特性に及ぼす遊離酸化物の影響について (1)非脱鉄アロフェンがアルカリ側で分散しにくい理由は荷電特性だけでは説明し切れない. (2)その原因は, アルミニウム・鉄の和水酸化物による等電点の上昇, アルミニウムポリマーの直接的凝集作用, アロフェン表面の荷電の不均一分布などによると考えられる. (3)アルミニウム・鉄イオンを脱鉄アロフェンに添加して考察した結果, 上記の性質の主な原因はアルミニウムによるものと考えられた.
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