研究概要 |
1.感潮域における現地観測: 観測手法は平均水理量法(プロペラ流速計, 電導度と水温)と電磁流速計による変動流速法を用いた. 特に後者は, 本研究費で購入し, 現地でアナログ量をカセットテープに収納後, 16βパソコン主体のデータ処理システムによってAD変換, 更に, カードイメージのデータファイルを介して計算処理した. 前者による流速と濃度の鉛直分布の全体把握は, 目標となる密度界面近傍の水深約3m範囲の変動流速測定(鉛直15cm刻み, 1点60秒, 15分間隔)を可能ならしめ, 双方の観測値がより有効に連携され, 次の解析に十分活用できた. 観測は6km地点で実施した. 2.観測値の解析検討: 潮汐変動に基づく連続的, かつ多段的な混合拡散現象を解析するために, 淡水と海水との中間に形成される混合層を考慮した玉井の3層流モデルを適用し, 各層の密度, 流速, 層厚さを観測値に基づき計量したところ, それぞれが対潮位ループ形状に描き出され, 各特徴が明確に把握できることを発表した. また, 二つの界面における混合機構を据えるために, 各層の平均水理量を用いた連行係数を計量し, 各値が無次元係数の岩崎数とリチャードソン数のベキ関数形で具体的に表示可能なことを発表した. 一方, 変動流速の測定値から, 各種の乱れ特性値を計算し, 密度界面の経時的形成過程が, これらの分布性状と良好に対応することを見出した. 結局, 3層流モデルを適用した観測値の解析結果から, 平均水理量による評価が極めて有効であり, 界面混合機構の解析も流況を限定すれば十分に説明できる. ただし, 乱流機構のデータは, 今後更に蓄積する必要がある. 3.感潮非定常密度流の解析: 鉛直2次元非定常密度流の数値解析プログラムを作成し, 各種のキャリブレーションを試みたが不規則河床形状の不整格子組みと物理定数の与え方に問題が残り, 十分な成果とはいえないが今後活用できる見通しが得られた.
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