研究概要 |
農産物の物性およびその測定法に関する研究が特に推進されている. この中から農産物の物性値の測定法については測定の基準化や新たな測定法の提唱などがなされている. 本研究は, 作物の力学的特性値の中でも特にその測定が困難なパラメータ(たとえばポアソン比, 縦弾性係数, 体積弾性率など)を一軸方向の圧縮試験側方変位の光学的変位測定及び最新の有限要素逆解析法の組み合わせにより決定する総合的測定システムについて研究する事を目的とする. 昨年度は, 共役傾斜法による有限要素解析法についてポテンシャル問題および軸対称弾性問題を素材に研究し, 本研究目的に適合する有限要素法を用いた軸対象弾性解析プログラムを作製した. 研究の最終年度である本年は, 多くの材料について試験を行ったところ, 逆解析の収束速度が試験効率に大きく影響することが明かとなり, 逆解析法を従来の最小2乗法からカルマンフィルタ法に変更し, 計測システムの測定効率を飛躍的に改善した. 本システムに関して特記すべき点は, 計測を目的とする力学的パラメータを有限要素逆解析法を用いて推定するところである. この数値解析プロセスが本システムに組み込まれたことにより農産物を対象とする計測では避けがたい不均一材料の扱いが可能になった. また, 逆解析法についても本研究過程で通常の最小自乗法によるパラメータ推定からカルマンフィルタ法による推定へと発展をみるに至り, 本研究成果が学会においても注目された. 本研究は, 農産物について力学的パラメータのみならず熱伝導係数, 水ポテンシャル効果係数などの物性値の計測に大型の数値解析手法を導入した計算機支援の計測システムの開発とその応用が極めて重要かつ有効であることを明らかにした.
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