研究概要 |
I.ウシ卵胞内卵子をより生体内に近い条件下で成熟させるために, 卵胞培養法を確立した. まず, 卵胞培養による体外成熟および体外受精に及ぼす培養時間の影響を検討した. 実験1では0〜56時間まで8時間間隔, および28〜38時間まで2時間間隔で培養し, 体外成熟率を検討した. 実験2では, 24, 32, 40および48時間培養した卵子を用いて体外受精を行い, 受精率(精子侵入行う前核形成が認められた卵子数/検査卵子数)を検討した. 得られた成績は次のとおりである. 1)成熟卵子は培養24時間で出現し, 培養32, 40, 48時間ではそれぞれ57, 48, 56%と他の培養時間と比べて有意に高い(P<0.05)成熟率であった. 2)培養28〜38時間を2時間間隔で検討した結果, 各培養時間による成熟率の間に有意差は認められなかった. しかし, 培養32時間以上において, 培養時間が長くなる程成熟率も高くなる傾向が見られた. 3)受精率は, 24, 32, 40, 48時間培養でそれぞれ20, 37, 25, 37%で, 各培養時間の間に有意差は認められなかった. しかし, 雌雄両前核の形成が認めれられた正常受精率は培養48時間で最高(37%)であった. II.卵胞培養法および卵胞より採取して後に卵子を培養する方法(卵子培養法)による体外成熟率, 体外および体内(ウサギ卵管内)受精率, 分割率を検討した. 体外成熟率は卵胞培養法で58%, 卵子培養法で53%と有意差は認められなかった. しかし, 体外受精率(55%)およびウサギ卵管内での分割率(2-8細胞期)(35%)は卵胞培養法の方が有意に(P0.025)高かった(卵子培養ではそれぞれ37%, 21%). また, 新鮮原精液を使用することにより凍結融解精液を使用した培養に比べて有意に高い分割率が得られた. 以上の如く, 卵胞培養により成熟した卵子は従来の卵子培養法に比べて, より生理的に成熟していると考えられ, 高い受精率および分割率が得られることが明らかとなった.
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