研究概要 |
牧草の品種の相違が家畜生産性に及ぼす影響を明らかにし、家畜生産性に関与する要因の解明を行い、効率的な品質改良育種法に関する情報を得ることを目的に、昭和61年に試験圃場を設置した。供試材料はオーチャードグラス(Or)4品種とペレニアルライグラス(Pe)、トールフェスク(Tf)各1品種で、昭和62年と63年の2年間に延24回、緬羊による放牧を行った。各放牧前に採取した牧草試料について消化率とミネラルの分析を行い、草種・品種間差を調べると共に、収量・草丈のデータと合わせ採食性関連形質と関係の深い形質の解明を重回帰分析によって行った。 採食性関連形質ではTfがPeとOrに比較してよくない結果が得られ、Or品種間では有意差は認められないものの値は大きく異なり、採食量ではキタミドリ、採食率ではオカミドリ、緬羊の増体量から推定した草地のTDN生産量ではナツミドリが高かった。重回帰分析により家畜生産性に関係の深い形質を求めた結果、採食率と草地のTDN生産量では高い重相関係数が得られなかったが、採食量ではR=.904となり放牧前草量、草丈、消化率及びMg含有率が説明変数としてとり上げられた。 消化率は草種間ではPeが高く、Or品種間ではオカミドリが高かった。ミネラル含有率ではNとMgはTf、PとCaはPe、KはOrが高く、Or品種間ではオカミドリがN,P,Mg,Caで高い値を示した。消化性画分に含まれるミネラルの割合をみると、N,P,K,Mgの大部分は細胞内容物中に含まれるが、Caは大部分が高消化性細胞壁に含まれていた。低消化性画分中に含まれる割合でOr品種間差が認められたのはMgであった。家畜の栄養障害の一つであるグラステタニーに重大な影響を及ぼすK/(Ca+Mg)当量比を高消化性画分中のミネラル含量から算出すると、オカミドリが最低値を示しグラステタニーにかかりにくい品種であることが明らかになった。
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